アブ・メナ

アブ・メナ

世界遺産のアブ・メナとは、エジプトの首都カイロから北西に約180kmある遺跡群です。
アブ・メナへはカイロからタクシーなどを使い、四時間程で行くことが出来ます。
観光で行くのならば、アレクサンドリアに寄ってみるのもいいのかもしれません。

ここは古代エジプトにおけるキリスト教の聖地でした。
世界遺産のアブ・メナの名前のもととなったメナスは285年、メンフィス郊外の町で生まれました。
父親は知事であり、敬虔なクリスチャンでもありました。
メナスも父親と同じようにクリスチャンとして育てられますが、幼いうちに両親を亡くしてしまいます。

両親の死後、ローマ軍に入隊したメナスは若くして高官となりますが、そこで問題が起きました。
当時ローマ帝国はキリスト教を弾圧する動きがあり、メナスはキリスト教弾圧を命じられたのです。
しかし、クリスチャンであったメナスはこれを受け入れられず、軍に逆らうことを選びます。

数年後、神に祈りつづけたメナスは、軍からの酷い拷問の中で殉教することとなります。
彼の死後、遺体はラクダの背に乗せられて運ばれましたが、そこで不思議なことが起こります。
それまでは普通に歩いていたラクダの足がぴたりと止まってしまったのです。
これではいけないとラクダを押しても、一歩も動こうとしませんでした。
そこで人々は「ここが神が決めた場所なのだろう」と、その場にメナスを埋葬したのです。

メナスが埋葬された後、再び不思議なことが起こります。
一頭の皮膚病にかかった羊が埋葬場所の近くの水に落ちたところ、病気が治ったというのです。
この噂は瞬く間にエジプト中に広がり、癒しの聖地として巡礼者が訪れたのです。

さらに四世紀には聖堂が建てられるまでになりました。
宿泊施設や洗礼堂なども次々と整い、町は栄えていきました。
残念ながら遺跡はイスラム教徒の手によって七世紀初めに破壊されてしまいます。
しかし、その面影は現在も見ることが出来ます。
砂に埋もれた遺跡を見ていると、メナスを慕って祈りを捧げる巡礼者が見えてくるような気がします。

現在エジプトの世界遺産アブ・メナにあるのは修道院と遺跡の2つです。
この修道院は1959年に建てられました。
修道院から遺跡までは約2kmの道程を南へ歩いていきます。
そうすると、周りを砂漠に囲まれた世界遺産のアブ・メナ遺跡が現れます。
メナスはエジプトの照りつける太陽と、広大な砂漠に負けないくらいの信仰心を持っていたのかもしれません。
そしてそれが、彼を聖者たらしめた最も大きなものだったのでしょう。

遺跡を訪れた際は、ぜひ古代エジプトとその地に眠る聖者に思いを馳せてみてください。
アブ・メナは1979年に世界遺産の文化遺産に、2001年には危機遺産には登録されています。
危機遺産とは字の通り、危機に晒されている遺跡のことです。
エジプトの聖者メナスの人生の軌跡を残すためにも、この遺跡を皆で守っていかなくてはいけません。